もう一つの七夕伝説 .. 中国
牽牛星の(わし座アルタイル)傍らに寄り添うように光る星ふたつ...牽牛の息子星と娘星と呼ばれます。
悠々と煌き流れる天の川の向こう岸には、子供達の母親、織女星(こと座ベガ)が艶やかに輝いております。
昔々ある村で、牽牛という若者が、牽牛の兄である夫に先立たれた兄嫁と一緒に牛の世話をしながら暮しておりました。
この兄嫁がお金がないと言うので、牽牛は寒さをしのげるような着物ももたず、食べるものもろくに与えてもらえなくても、寒さに凍え、お腹を空かせながらも一生懸命牛の世話をしていました。
そんなある日のこと、牽牛が牛を放牧しようとしたところ、どういうわけか、牛が家の方へ戻って行ってしまいました。
慌てて後を追って行くと、家の方からとても美味しそうな匂いがただよってきます。
不思議に思って家の中を覗いてみると、兄嫁がほかほかに焼けた饅頭をほおばっているところでした。
自分だけご馳走を食べているところを見られた兄嫁は、牽牛に向かって怒り狂うので、牽牛は泣きながら牛小屋へ逃げ込みました。
すると、反省したのか、後から兄嫁が美味しそうな麺の椀を持って来ましたので、
牽牛はそれを食べようと箸をつけようとしたところに、不思議なことが起こりました。
年老いた牛が「食べるのをお止めなさい、その中には毒が入っています。早く私と一緒にここを逃げましょう」と言うのです。
牽牛は長いこと世話をしてきた牛の言うことを信じて、家を後にしました。
途中、牛の不思議な力で銀を拾った牽牛は、家や土地を買ってやっと安心して暮せるようになりました。
そこで、牛が「後ろの山に池があって、そこへ仙女たちが水浴びにきます。その仙女の腰巻を隠して置きなさい。
そうすれば、仙女は天に帰れなくなって、きっとあなたお嫁さんになってくれるはずです」といいました。
牽牛は言われるがままに仙女の腰巻を隠して置くと、天に帰れなくなった織女という仙女が牽牛のもとへ来たので、この仙女と結婚しました。
こうして結ばれた二人は、仲の良い夫婦となって、一男一女に恵まれ、それは幸せに暮しておりました。
ところが、そうしたある日のこと、いつものように牽牛が畑へ行って帰ってくると、子供達が泣きじゃくっています。
家に入ると、怒り狂った天の西王母が妻を捕まえていました。
西王母は、「この娘は天に属する者、天に帰らなければならぬ」と言い放って、織女を連れて天に昇ってゆきました。
途方に暮れた牽牛は、子供達の手を引き、牛にもらった空を飛ぶ靴を履いて、天へ昇って星になりました。
でも、織女の居場所と、牽牛と傍らの子供達の間には、決して渡れぬほどの大河、天の川が横たわっています。
それから長い年月が過ぎましたが、今だ、けなげに向こう岸の織女を慕い見つめ続ける牽牛親子に胸を打たれた西王母は、
年に一度だけは家族が再会できるようにしてあげたそうです。
それが七月七日、織女と牽牛、そして2人の子供達が愛しい人と逢うことを許された大切な夜なのです。
・・・中国 ◆◆
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